Climate Action
Climate Action
気候変動の影響は世界中で現れています。今こそ、意味のある協力的な行動が必要です。私たちは大胆な目標を掲げ、低炭素社会の実現に向けて優先的な取り組みを進めています。RE100で掲げる目標に向けて着実に前進しており、2023年にはScience Based Targets initiative(SBTi)によって、当社の短期的な排出削減目標が承認されました。これにより、当社の目標がすべてのスコープで世界の気温上昇を1.5℃に抑える取り組みに沿っていることが確認されています。2030年までの目標として、2019年を基準年に、スコープ1およびスコープ2の排出量を60%削減し、さらにスコープ3のカテゴリ1およびカテゴリ4の排出量を50%削減することを約束しています。
気候変動への取り組み
私たちの気候戦略は、意味のある変化を生み出せる6つの重要な領域に焦点を当てています。
- エネルギー効率と再生可能エネルギー:温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための第一歩はエネルギーです。私たちはバリューチェーン全体でエネルギー使用量を減らし、再生可能エネルギーへの移行を進めています。
- 素材:私たちが作るすべての製品は環境に影響を与えます。より環境負荷の少ない素材を優先し、使用量を減らす方法を模索しています。
- 製品の長寿命化と循環型社会:廃棄で終わる消費のサイクルを断ち切るため、長く使える製品を作り、製品の利用期間を延ばす取り組みを進めています。
- アドボカシー(政策提言・啓発活動):政府への働きかけによる気候政策の改善、支援団体のサポート、そして消費者への気候意識の啓発を通じて、より広範な気候アクションを推進しています。
- 土地利用:土地利用は気候変動対策の中心的な役割を果たします。私たちはサプライチェーン全体で森林破壊をなくし、再生型農業の可能性を探っています。
- 低炭素輸送:製品を世界市場へ輸送することは大きな炭素排出源です。排出源をより正確に把握するためデータシステムを改善し、削減に取り組んでいます。
温室効果ガス排出量
スコープ1およびスコープ2
2023年、オフィス、配送センター、直営店、自社工場などから排出された温室効果ガス(スコープ1とスコープ2)は、6,324トン(CO₂換算)でした。これは2019年を基準とした排出量から59%削減しており、2030年までに60%削減という目標にほぼ到達しています。ただし、2023年は事業拡大に伴い排出量が一部増加しました。小売店舗の総床面積が前年より増えたことで、世界全体の電力消費量が増加したためです。新しい店舗の中には、再生可能エネルギーの選択肢が限られていたり、コストが非常に高い地域もありました。それでも、2023年には世界全体の電力使用量の90%を再生可能エネルギーで調達しました。現時点では、Green-e認証の再生可能エネルギー証書(REC)、I-REC、Guarantees of Origin(GO)などのエネルギー属性証書に大きく依存しています。
スコープ3
スコープ3の排出量は、当社の気候負荷全体の約95%を占めています。2023年のスコープ3排出量は約120万トン(CO₂換算)でした。最大の影響は、一次・二次サプライチェーンで使用されるエネルギー、製品に使う素材、製品の廃棄、そして世界中への輸送に関連しています。スコープ3の削減目標(2030年までに50%削減)は、カテゴリー1とカテゴリー4に適用され、2023年時点でスコープ3全体の84%を占めています。しかし、スコープ3の進捗はまだ目標に沿っていません。カテゴリー1と4は、基準年から3%、2022年から22%減少しましたが、これは主にデータ精度の向上や計算方法の改善によるものです。過去のデータを更新し、年ごとの進捗をより正確に比較できるよう取り組んでいます。最新のCDPレポートでは、当社の排出量とその要因について詳しく説明しています。2023年、ニューバランスはCDPからカーボン排出・リスク・機会の情報開示で「B」評価を獲得し、さらにサプライヤーとの協働による気候変動対策の取り組みが評価され、「2023 Supplier Engagement Leader」に選ばれました。
Prioritizing Renewable Energy
Prioritizing Renewable Energy
ニューバランスは、サプライヤーと密接に連携し、エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーへの移行を加速させています。特に、工場での太陽光発電の導入は排出量削減に非常に効果的です。私たちは、ドイツ国際協力公社(GIZ)や国際金融公社(IFC)などの組織と協力し、工場の屋上に設置する太陽光発電システムの開発を支援し、サプライヤー向けに気候変動対策の研修を提供してきました。2023年には、IFCの「ベトナム改善プログラム」第3フェーズの一環として、5社の主要サプライヤーと協力し、エネルギー効率化プロジェクトの特定と実施を進めました。
RE100のメンバーとして、2025年までに自社運営施設で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする目標に向けて着実に前進しています。
そのために、オンサイトでの再生可能エネルギー発電や、再生可能エネルギー証書(REC)、Guarantees of Origin(GO)の購入など、複数の戦略を活用しています。さらに、米国メイン州の「Net Energy Billing」プログラムの一環として、公共・民間の購入者コンソーシアムに参加し、4つの太陽光発電プロジェクトの建設を支援しました。これらのプロジェクトがすべて成功すれば、メイン州の当社施設の電力需要の約70%をこれらの契約で賄える見込みです。
Climate Advocacy
Climate Advocacy
ニューバランスは、目標達成のために積極的にパートナーシップを築いています。東南アジアでのクリーンエネルギー導入を加速するため、米国国際開発庁(USAID)のCorporate Clean Energy Allianceや米国国務省のClean Energy Demand Initiative(CEDI)などの組織を通じて、現地政府や志を同じくする企業と協力しています。また、国連ファッション業界気候行動憲章(UN Fashion Industry Charter for Climate Action)やOutdoor Industry Association Climate Action Corpsといった重要な業界連携にも積極的に参加しています。さらに、ニューバランスは2020年から「1% for the Planet」のメンバーです。選定された製品ラインの売上の1%を、気候変動対策や公共の土地保護に取り組む非営利団体に寄付しています。現在のプログラムは2025年12月まで継続し、米国で販売されるFresh Foam X Hierro v8およびFresh Foam X Hierro GTXのメーカー希望小売価格(MSRP)の1%を「1% for the Planet」に寄付し、Protect Our WintersやTrust for Public Landを支援しています。
Water
Water
レザーのなめしや繊維加工は水を多く使用する工程です。そのため、私たちは素材サプライヤーと協力し、サプライチェーン全体で水資源への影響を把握・管理しています。
サプライヤーネットワークと密接に連携し、水リスクの評価、淡水使用量を減らすための取り組み、そして製造工場やなめし工場から排出される排水を安全に環境へ戻すことを確実にしています。
排水管理
繊維産業は、世界で最も水質汚染の原因となる産業のひとつとされています。サプライヤーの製造工程で発生する排水は、環境に戻す前に必ず処理されなければなりません。ニューバランスは、業界全体で活用できる統一基準としてZDHC排水ガイドラインの策定に主導的な役割を果たしました。このガイドラインは2017年に導入され、現在も業界標準として機能しています。当社のサプライヤーは、ガイドラインへの適合を確認するため、年に2回のテストを受けています。私たちの目標は、2025年までに有害化学物質の排出をゼロにすることであり、その進捗はZDHC排水ガイドラインに基づいて測定されます。2023年時点で、参加サプライヤーの87%が適合しており、環境に直接排水を行うサプライヤーでは93%が適合しています。2023年に最も多かった違反は、揮発性有機化合物(VOC)、有機スズ化合物、その他の化学物質の存在によるものでした。違反があったすべてのサプライヤーは、原因分析を行い、是正措置計画を実施しました。
IPE検査
ニューバランスは、中国のサプライヤー工場における違反履歴(排水問題など)を確認するため、公共・環境問題研究所(IPE)が開発した「ブルーマップデータベース」を活用しています。違反件数は2018年以降減少傾向にあります。2023年には16件の違反を確認し、サプライヤーと協力して原因分析、是正措置の実施、ガイドラインへの適合を進めました。この取り組みが評価され、IPEの「2023年グリーンサプライチェーンCITIインデックス」では、中国で事業を展開する700社以上の中で第10位にランクインしました。
Waste
Waste
私たちは、使い捨てで終わる消費のサイクルから抜け出すことに挑戦しています。長く使える製品を開発し、工場で出る廃材を再利用して新しい素材に生まれ変わらせる。さらに、使い終わったニューバランス製品をリサイクルしたり、再利用できる仕組みを模索しています。
廃棄物ゼロを目指して
シューズ製造では、大量の廃棄物が発生しやすく、廃棄物管理の仕組みが整っていない地域もあります。私たちは、2025年までにすべてのフットウェア工場から埋立廃棄物をゼロにするという目標を掲げています。2023年には、自社工場とTier 1のフットウェアサプライヤーで約18,000トンの廃棄物が発生し、そのうち70%を埋立処分から回避しました。この目標を達成するためには、製品づくりのプロセス全体に変革が必要です。廃棄物を発生源で減らし、避けられない廃棄物を新しい素材に生まれ変わらせる方法を見つけること。それが私たちの挑戦です。
Designing out Waste
Designing out Waste
私たちの工場は、デザインしたものを形にします。しかし、工場で発生する廃棄物の一部は、製品設計の初期段階の判断に起因しています。そこで、社内のデザインチームは素材効率を高め、不要な廃棄物をなくすために、製品設計のあり方を見直しています。それでも廃棄物が発生した場合は、再利用できる仕組み(クローズドループ)を探り、廃棄物を新しい素材や原料に変える方法を模索しています。例えば、サプライヤーと協力してリグラインド(再粉砕)プロセスを導入し、工場で出るゴムやEVAの廃材を新しいアウトソールやミッドソールに再利用しています。2023年には、リサイクルレザーの試験導入を行い、レザー廃材を再び使える素材に変えるため、レザーサプライヤーと開発契約を締結しました。さらに、ポリエステル繊維廃材を再び繊維に戻すテキスタイル・トゥ・テキスタイルリサイクルにも取り組み、約400万足の製品にリサイクル糸を採用しました。
長く履いて、廃棄を減らす
私たちの業界は、長年にわたり「短命な製品を大量に作り、捨てる」というサイクルを続けてきました。資源を消費しながら、製品の寿命や廃棄方法を十分に考えてこなかったのです。最もサステナブルなシューズは、すでに存在しているもの。この考え方を軸に、私たちは変革に取り組んでいます。
現状では、製品を使い終えたときに責任ある廃棄方法を選べる選択肢はほとんどありません。素材単体ならリサイクルできる場合もありますが、靴のような製品全体をリサイクルする仕組みや技術は、まだ発展途上です。そこでニューバランスは、靴の寿命を延ばす取り組みを進めています。日本でのシューズリペアサービス、Soles4Soulsとのグローバル寄付プログラム、米国で開始したトレードイン&リセールプログラム「Reconsidered」。「Reconsidered」は、使用済みのニューバランス製品や、新品として販売できない外観不良品にもう一度機会を与える仕組みです。さらに2023年には、他のフットウェアブランドとともに循環型ソリューションの開発・拡大を目指す「The Footwear Collective(TFC)」に参加しました。